米国にいる時分、最も楽しくあり、
また、最も有益であったのは、
三年目に一家庭で過ごした一年間であった。
この間において、私は、
家庭における婦人の位置・その働きぶり・家庭整理の方法・
家庭に対する理想・家庭の楽しみなどを、
親しく学ぶことが出来たのである。
今でも、目を閉じて考えると、
楽しかったその時の光景がありありと浮かんでくる。
中にも私が楽しく思ったのは、
この家庭で見たクリスマス降誕祭である。
私が寄寓した家の主人、ガーレー夫人というのは、
紐育トロイの富豪で、13年前夫に死に別れた。
今は、末の娘イデスと女中2~3人を
使って暮らしている。
家は三階建で、お金持ちの家としては、
誇るべきものではなかった。
ガーレー家の筋向いの総領娘の家族も、
他に嫁入りしている娘の家族も、
ガーレー夫人の家に集まるのである。
そして、一緒に面白く遊んだり、贈り物をしたりなどする。
半月位前から、婦人は、私とイデスを呼んで、
クリスマスの余興を頼んだ。
そして、ご自分は、ご馳走の準備を始められた。
イデスはバッサー大学の卒業生で、
私と年齢も近いから何でも話が合う。
イデスと私は、
皆を楽しませる余興はどうしようか。
と朝晩考えた。
そして、評判になっていた北極探検を土台として
趣向を凝らす事にした。