日本婦人が自活できるだけの収入のある職業は、
乏しくないと思う。
特に、良いだろうと思う職業を、
二つばかりここに挙げてみよう。
向こうには、マニュキュアという独立した職業がある。
大抵は、女髪結いで兼職しているが、
爪磨きだけでも相当の収入はある。
紐育にはこの専門の学校があって、3ヵ月で修業する。
普通の爪磨きで、我々女学生を相手の場合、
一回で25仙(50銭)位もらえる。
上手くなって、社交界婦人を相手にするようになると、
一回に1弗位はもらえる。
少し美術思想に富んだ人なら、帽子造りは良い職業であろう。
収入は技術によって大差がある。
また。独立している人と雇われている人とで異なるが、
本当に上手になって大きな店に雇われると、
月給40~50弗はもらえる。
ニューヨークでは、普通女学生等の帽子を装飾する場合、
帽子一つにつき50銭から23弗はもらえる。
日本人でも相当の収入があるだろうと思う。
以上のように、収入は、随分よいように聞こえる。
しかし、外国における労働が、
婦人の思想人格の上にどんな影響を及ぼすか。
という事について、私の観察を少しお話したい。
Copyright ⒞ 2018 buta  All Rights Reserved.