婦人について 米国における日本婦人の労働 その3 ************************************************** ************************************************** **************************************************

アメリカの家庭では、

クックは台所の女王で、

婦人でさえ台所へ来ると、クックに服従する。

婦人に、台所の敷居を踏ましてはならない。

などと威張っているクックもいる。

ここに一人、米国で長年クックをしている日本婦人がいる。

元日本のある学校で家政学を修め、研究の為に渡米し、

学費の欠乏からやむを得ず、

中働きとなってある家庭に雇われた。

けれど、男子程の収入がなく、

再び学校へ入る機会をなくした。

しかし、中働きをしている間に料理法を覚え、

2~3年後にクックとなった。

そのうちに、貯金ができて仏国迄料理の研究に行ってきた。

日本に帰れば、様々な面倒な習慣に束縛されて、

朝から晩まで働いて、月給50円位が関の山だ。

しかし、この地でクックをすれば、

食費・部屋代はむこう持ちで、

80~90園は、そっくりそのまま残っていく。

と、いう計算から、この地に留まる事に決めた。

そして、去年で、渡米後12年位なるそうだが、

今は、相当な貯金が出来て日本に還れば、

利子で暮らしてゆけるようになった。

との事であった。

中働き(セコンドメイド)には、

日本婦人がたくさんなっている。

クックのような専門の技量がなくても、

気さえ利けばよいのである。

だから、渡米したての若い婦人には、

この上ない良い職業である。

その仕事は、床の上げおろし給仕・家の掃除・玄関番等で、

月給は、17~18弗~30弗まである。

立派な日本婦人でかの国の家庭で、

5年間、中働きをしている人がいる。

日本のある高等女学校を卒業し、英語学校を出て、渡米して、

幼稚園の保母学校を卒業したが、

旅費をつくるために中働きとなった人もいる。

中働きと言えば、聞こえは悪いけれど、収入からいえば、

日本に帰って教師となるよりずっと良い。