アメリカの家庭では、
クックは台所の女王で、
婦人でさえ台所へ来ると、クックに服従する。
婦人に、台所の敷居を踏ましてはならない。
などと威張っているクックもいる。
ここに一人、米国で長年クックをしている日本婦人がいる。
元日本のある学校で家政学を修め、研究の為に渡米し、
学費の欠乏からやむを得ず、
中働きとなってある家庭に雇われた。
けれど、男子程の収入がなく、
再び学校へ入る機会をなくした。
しかし、中働きをしている間に料理法を覚え、
2~3年後にクックとなった。
そのうちに、貯金ができて仏国迄料理の研究に行ってきた。
日本に帰れば、様々な面倒な習慣に束縛されて、
朝から晩まで働いて、月給50円位が関の山だ。
しかし、この地でクックをすれば、
食費・部屋代はむこう持ちで、
80~90園は、そっくりそのまま残っていく。
と、いう計算から、この地に留まる事に決めた。
そして、去年で、渡米後12年位なるそうだが、
今は、相当な貯金が出来て日本に還れば、
利子で暮らしてゆけるようになった。
との事であった。
中働き(セコンドメイド)には、
日本婦人がたくさんなっている。
クックのような専門の技量がなくても、
気さえ利けばよいのである。
だから、渡米したての若い婦人には、
この上ない良い職業である。
その仕事は、床の上げおろし給仕・家の掃除・玄関番等で、
月給は、17~18弗~30弗まである。
立派な日本婦人でかの国の家庭で、
5年間、中働きをしている人がいる。
日本のある高等女学校を卒業し、英語学校を出て、渡米して、
幼稚園の保母学校を卒業したが、
旅費をつくるために中働きとなった人もいる。
中働きと言えば、聞こえは悪いけれど、収入からいえば、
日本に帰って教師となるよりずっと良い。