そして、紐育で、
部屋代が一週間に二弗・自由にガスが使え、自炊ができる。
しかし、わが東京萬年街に匹敵する
下町の貧民窟にもないかもしれない。
殊にここにいれば、
難しい外国語を手真似をしながら話すような必要もないから、
英語のできない者や、財政のあまり豊かでない人達には、
この上ない良い住まいである。
だから、
紐育において日本婦人の自活の方法を知るには、
ここに来る婦人を研究するのが最もよい。
私は、渡米5年目に
このホームでひと月を過ごした婦人に接する機会を得た。
そして、日本では相当な地位にあり、教育もある人が、
労働に従事している事には驚いた
ただし、かの地おける労働の報酬は、
我が国における高等官の相当するほどであろう。
労働で一番収入の多いのは、「料理番」であるが、
その報酬にはいろいろある。
大きなホテルの料理長等になると、
月に千弗位は貰える。
普通、日本婦人が従事しているのは家庭料理番で、
月給25弗~50弗・60・70弗位である
まだ、経験のないうちは、中流社会の家庭で働く。
そこで、クック一人として雇われる。
こんな所は、料理の他に、
皿洗いや給仕はもちろん家の掃除から洗濯の手伝いまでする。
しかし、月給が忙しいわりに少なく、
たいてい25弗から30弗迄。
少し進んでコックの他に、。
中働きを置くような家庭へ行くと、
コックの仕事は料理と皿洗いで、月給は30~40弗。
もひとつ進んで、
給仕、仲働き、コックの助手等で働く家庭は、
コックは主人の料理をするだけで、
皿荒いもなんにものしない。
仕事の少ないわりに報酬が増え、
月給は大抵50弗以上である。