領事さんが送ってくれた小僧に送られ、
二階造りの電車を見ながら
私共は、ステーションに向かった。
米国に比べると物価が安いので、見る物を買いたくなる。
けれども、荷物になるので、
小さな旅行用の物2~3点を買ったのみで、
他は我慢した。
2時頃でもあったろうか、
私共はスコットランド行の汽車に乗り、
北へ北へと走って行った。
6月の末で今から暑くなるといふ時節に、
汽車の中は、だんだん寒くなってきた。
私、は薄いコートを引っ掛けた。
汽車の造りはとても面白い。
一つの客車が、
6人入る位の小さな部屋に別れていて、
外側には、各客室に通ずる廊下が付いている。
室内には、美しい風景画等が掛けてあり、
腰掛にはビロードが張ってある所等、
一寸小さい応接室のようである。
ベルを押すと、給仕人が出て来る。
私共も、同室の乗客の真似をして、
お茶とお菓子を注文した。
汽車ばかりではないが、英吉利のものは、
なんでもホームライクにできる。
米国では何でも大仕掛けで工場式で、
何でもかんでも一つ所にたくさん詰め込むから、
便利は便利である。
だが、万事が殺風景である。
同じ高のお金を費やして、イギリスとアメリカと、
どちらで家庭的の趣味を多く得られるか。
と、いうとそれは勿論イギリスである。