私共二人と負いなる人と都合三人。

小山と小山との間を走る事約二時間、

英国一の大湖ウィンダメャーの畔に来た。

雨の中にボーっと向こうの山が見える。

ハッキリ見えぬ所に却って面白みがある。

湖を左に見て車は、愈々(いよいよ)走った。

また一つ少し小さい湖の前に出た。

是こそ英国の大詩人ウォーズヲースに、

自然の美を嘆賞せしけたグラスミヤ―である。

これよぼよぼと降る雨を冒して、

湖畔の小さい寺院にある詩人の墓を訪うた(とうた)。

質素な石碑で、ただ、

ウィリアム・ウォーズヲース

と、書いてあった。

詩人の遺跡を偲び、

グラスミヤ―の景色を賞でながら(めでながら)、

湖畔を散歩した。

詩人が空想にふける時に、

必ず来て腰をかけたという石も見た。

かくて七時半に宿に帰った。