私共を除いては皆家族の者なので、
互いの話は、気の置けない如何にも楽しい話であった。
これ等のお話から私は、
此の家族の人々について色々な事を知った。
ギルクス氏には一人も子供がない。
それで姪御さんを、小さい時から
自分の子供のようにかわいがって育てた。
此の姪御さんは、大の運動好きであった。
奥さんになってからも夫と一緒に、
時々長い徒歩旅行をするそうである。
この子はもう三人の母なのです。
なのに、なかなかまだお転婆が止まないようです。
と云って、ギルクス氏が戯かふ(からかう)と、
姪御さんは肉付きの良い頬に笑いをたたえた。
そして、
ついこの間も十日の徒歩旅行をしてきました。
昨日帰ったばかりです。
この旅行では、毎日十里づつ歩きました。
と、云われた。
その内に雨が降ってきたので、
自動車旅行の楽しみの減る事を皆心配した。
ギルクス氏は私共に向かって
雨が降っても私のせいではありませんよ。
といって、皆を笑わせた。
食事が済み、門に出ると、
美しい四人乗りの自動車が待ってゐた。
主人は、
自分は風邪の気味のゆゑ御免を蒙ります。
しかし、甥に代理をいたさせましょう。
と云った。
私は、
此の無邪気な青年の方が、却って気が置けなくって良い。
と心の中で喜んだ。
家族に厚く礼を述べ、暇を告げて、自動車に乗った。