食事ができるまで、華やかな裏庭に案内された。
薔薇やカーネーション等が咲き乱れていた。
そして、真っ青な芝生の間に白い小石を敷いた其道を、
夫人は、美しい黒のレースの裾を長く引いて歩かれる。
後について行く私は、
丁度腰元のようであると恥ずかしく思った。
庭の彼方から若い婦人が、
同じ年位の男の子と共に勢いよく歩いてきた。
叔母様、暫く。
今日はご飯に呼んで下さってありがとう。
と、云いながら、熱いキスをした。
夫人は私の方を向いて
これが私の姪で、そこにゐるのがその夫です。
どうぞお近づきを。
と、二人を紹介した。
此の姪なる若奥様が、あまり立派にしていなかった。
なので、なんだか仲間でもできたような気がして、
嬉しかった。
そこへ、ギルクス氏の甥といふ
18~19歳位の赤い頬の若々しい青年が現れた。
互いに紹介したり、談話をしたりしているうちに、
女中が、食事の出来た事を報じてきた。
夫人に導かれて一同食堂に入った。
私は主人の右に、原口は主婦の右に座った。
席が定まると、主人が立って祈祷した。
食事は、
初めがスープ、其れか魚・鳥・野菜・デザート、
最後に果物・菓子
と、いふお定まりのコースであった。