翌朝、

十時からこのエディンバラの城が公開される。

と言ふので、9時頃にホテルを出た。

しかし、七月といふのに外は、ゾッとするほど寒い。

左の方のダラダラ坂を少し上がった所に、

300段もありさうな急な石段があった。

これを通らなければ、遠回りをしなければならぬから、

苦しいけれども、登った。

そして、城の前の大通りに出た。

ここで、一番目につくのは、

軍人の服装の古風な事、美人の多い事であった。

通る婦人も通る婦人も皆、肉つきがよくて、

真っ白な頬のあたりがボーと櫻色になってゐる。

私は、

黒い髪と黄ばんだ顔をした日本の女性は、

さぞ見劣りするだらう。

と、心配した。

婦人達は、

亜米利加では見られぬ様なゆかしい所があった。

それは、亜米利加では、

日本人を見た事のないような所に行くと、

立ち止まつて、

人を見乍ら(みながら)批評等する人達がいる。

併し、蘇格蘭の婦人は、

日本の婦人を見た事は勿論無いけれども、

見て見ぬふりをして通る。

まづ、1シルリング(50銭)で案内者を頼んだ。

正門を入って右に廻れば、

王冠と王剣とを刻み込んだ第二の石門がある。

門の上の鉄の格子の嵌った部屋は、

昔牢屋に使ったものださうである。