私の仕度が終わった頃、食堂は開かれました。
むろん、これは私一人を招待したわけではありませんが、
こんなにたくさんの人を招いたのか。
と、驚くほど、多くの人を食堂に見たのであります。
このたくさんの招待客というのは、
多くはマダム・パウルの贔屓の客だという事でした。
ところがマダムパウルは、滑稽な人だものですから、
私をこの食堂に導くとすぐ、
プリンセスが来た。
と、言って、紹介したのであります。
これには、私も面食らってしまって、
どういうものか、一同がそれを信じて、
私を中心にして歓待するのです。
それは、
よく支那の皇族などが大学に入学してきて、
随分、贅沢な生活をしているのを、
見つけていたい為でもありましょうか、
私の生活は、そんなに贅沢でもなかったのです。
こういう中へ、
華やかな日本服を着たりして出かけたものですから、
やはり、一同が
日本のプリンセス
と、信じてしまったのでありましょう。
マダム・パウルはこんな悪戯を言うほどの人で、
ことに職業が職業ですから、
非常に座を執りなす事も上手です。
にぎやかな性質でまた、随分強いお酒も飲みます。
一座の中心は、自然にこの人に集まって、
客も上機嫌に浮かれて来て、
一同充分の歡を尽くして別れました。