コロムビア大学に入学した二年目に、

私にとっては、意外な、そして面白い一人の友人が、

出来ましたからそのお話をしてみましょう。

私は、心理学の研究を目的として、

この大学に入学してきたのでありますが、

婦人で、心理学などを研究する者は一人もなく、

私は、ただ一人ぼっちで、

勉学上頼りになるような友人がなくて、

いささか心細く感じていました。

ところが、丁度、入学の二年目、

一人の婦人が、心理学の研究の為に、入学してきたので、

大層心強く思って、

専門が同じであるところから

すぐ親しい友達となることが出来ました。

この夫人は名を、

マダム・ウェブスタ―

と、申しました。

お話が上手で、

ウェブスターという名も

そのために自分で選んで付けた名だ。

と、いう事であります。

気性は至って、活発で気持ちよく太った婦人で、

その話を聞いていただけで、

晴れ晴れとするような人ではありましたが、

地味な方で、いつも真っ黒い絹の洋服を着て、

黒の帽子を被って、

その帽子も黒の羽を飾ったものであります。

しかし、こういう黒ずくめの中に、襟を金で飾り、

また、ダイヤの指輪を五つもはめているので、

一種の趣味を持った人だ。

とわかりましたが、

彼女がどんな人であるか、初めは想像もつきませんでした。