日曜の昼過ぎ、一階に来て、
そこを行き来する人を眺めているほど、面白い事はない。
三時頃、入口の戸が開いて、一人の青年が現れる。
帽子を取って事務所に行き、
自分は何々という者だが、
何々嬢にお目にかかりたい。
と、言う。
事務所には、
そのために12~13歳になるボーイを5~6人使ってある。
その中の一人が名指しされた令嬢の部屋に派遣されると、
間もなく、
同嬢はきれいなアフターヌーンドレスを着て出て来て、
嬉しそうに来客を迎えて応接間に案内する。
次に、入口の戸が開く。
また、青年が現れ、
同じ手続きをして、その友の婦人に面会する。
また、戸が開く。
こういう風に若い訪問者が続々入ってくる。
事務所は非常に忙しい。
ボーイが上に行ったり下に来たり、、てんてこ舞いをする。
訪ねるレディーが面会の用意のできていない時などは、
客は30~40分も待たされる。
君はいつから待っている。
僕は、ここに30~40分も立ち往生しているけれど
僕の友達は出て来ぬ。
などと、欠伸をしながら傍らの人に不平を言う人もある。
三時半から茶室に茶菓子がでる。
食堂の一つのテーブルに座っている人が、
一組になって代わる代わる毎日曜の支度をする。
私が入寮してから、4番目の日曜に、
私のテーブルに番が巡ってきた。
このテーブルには、
極東からの「大使(アドバイザー」」がいるのだから、
大いに立派にそうして、奇抜にせねばならぬ。
というので、その前の金曜日の夜、
みんな私の部屋に集まって来て、相談を始めた。
一生懸命考えた末、人の発議でこういう事が決まった。
それは、一階のライブラリーを茶室にして、
一面の櫻を飾り、給仕は皆、日本服を着、
私が一番良い着物を着て、茶を出す役をするという事だった。
土曜の午後、
皆でして茶室を飾り、
入り口と部屋の周囲に小さい日本の提灯を下げた所は、
櫻花爛漫(ろうからんまん)たるもとに、
園遊会の催しでもあるようでした。