四マイルも走ったろうと思う頃、
山のかなたにランプの光が見えた。
それが、我々の目的地であるとのこと。
登る事およそ30分、古い石造りの家の前に車が止まると、
待ち構えていたように
中から5~6人の婦人が飛び出してきた。
その中で、目鼻立ちの実に優しく、
若い時にはさぞかし美しかったと思われる
ロマンティックな夫人がクリスティー夫人であった。
まぁ、可愛いお嬢さん。
一人ぼっちで旅などさせて可哀そうに。
ここを自分の家と思ってゆっくりなさい。
と、言いながら私の額に軽くキッスをした。
夫人は先を歩いていった。
テントが街の様に並んでいた。
一番端のテントに私を連れて来た。
台の上に蝋燭に火を点じた後、外に顔を出し
エーバリン!エーバリン
と、呼ばわった。
イェース
と、返事があるとすぐテントの端があいて、
顔色の冴えた15・6才の少女が現れた。
鶴さん、彼女が、エーバリンという名で、
高等女学校の生徒ですが、
あなたのテント友達になるのですよ。
と、夫人はまず少女を私に紹介して、
次に少女の方を向いて、
エーバリン、ご入要なものなどがあったら教えてね。
彼女の面倒を見てあげて頂戴な。
と、言いながら二人にキッスして出て行った。