馬車に、キャリー・オールとヘイ・ライドとの二種類がある。
前者は、
二頭立ての十人位乗れる黒塗りの
なかなか見た所の良い馬車であるが、
後者は、到底街などで見られぬ珍奇なものである。
二頭立ての大きな荷車に、一杯高く枯草が積んであって、
その上には、20人位は乗れるようになっている。
これには、覆いも何もないから、
大きな麦藁帽子をかぶって日光を防ぐ。
その上に乗って、気楽なように歌など歌って
田舎道を通っていくのであるけれども、
慣れない私には、
人を馬鹿にしているようなきまりが悪いような気がして、
皆のように無邪気に楽しめなかった。
キャンプファイヤーというのは、
我々が毎土曜日の夕する遊びであって、
ロマンティックな感じを与えるものである。
夏の夜の事なので、
みんなが薄物の衣をつけて三々五々芝生の上に座を占める。
堆高く積んである枯れ木生木が、
火を点けられるやいなや一斉に燃え上がり、
生き生きとした人の顔を照らす。
クリスティー夫人は、
日頃愛しているギターを取り出して、
月に向かって讃美歌を歌うのが常であった。
かがり火が、次第に薄れて月の光のみ鮮やかになる時に、
夫人の声が、
時には高く、時には低く、時には太く、時には細く、
静かなる山の端に響く時に、
誰も、ただ恍惚として時の移るのを知らなかった。