米国では夏になると山の奥に天幕を張り、

自炊しながら野外生活を営む人がたくさんいる。

そして、学生や労働者などの団体もある。

生存競争の非常に盛んな米国のような国柄では、

一年に一度ぐらい閑静な山奥の生活をしなければ、

とても健康が続かない。

私が紐育に着いたのは、

丁度夏の最中で、学校が始まるまでには

まだ二カ月も間があったから、

その間は、会話の練習の傍ら

米国夫人の団体生活を見る為に

紐育付近で有名な

タモントの婦人の天幕生活

と、いうのに夏を送ろうと決心して

紐育に着いてから五日目にその山を目指して出発した。

ハドソン河畔を走る事4時間、

午後六時オルバニーの停車場に着く。

アルタ山行きの汽車が待ち構えていたので、

直ぐそれに乗り換える。

碓氷峠(うすいとうげ)程ではないが、

なかなかの急坂なので、汽車の進み緩く、

午後八時にようやくにしてアルタモントに着く。