食事後、初めて海洋病の感じを味わった。

胸がむかつき、頭がボウとしてきた。

手足が震える。

その苦しい事、

もう希望も何も一挙に投げ出したくなってきた。

なぜ、渡米など思いついたのだろう。

あぁ、苦しい陸地陸地・・・

なぜ、家にある時分に

布団が薄い!

と、なんでわがままを言ったのであろう。

この安楽椅子よりよほど、あの方が楽だったのに

あら、うらやましい事、あの娘も苦しんでいるようだけれど、

そばにお母さんがあんなに親切に看病している。

その夜に、家に帰った夢を見た。

そして、目が覚めるごとに

陸だったらよかったのに・・・

陸だったらよいのに・・・

と、繰り返した。

翌朝、ボーイが茶と菓子とを持ってきた。

パティ嬢もT嬢も床の中で食べた。

その習慣を知らない私は

この様子を床の中からそっと見ていて、

顔も洗わないで、汚い西洋人は味噌桶だ。

と、ひそかに笑った。