米国婦人の趣味に富んでおります事は、

実に羨ましい程であります。

日常生活の繁忙に追われながら、

種々様々の趣味に如何にものんびりした生活を、

営んでおります。

それは、私共の想像以外であります。

音楽や演劇に趣味を持っております事は、

どこの婦人も同じようでありましょう。

しかし、読書を趣味に持ってゐる事は、

米国婦人が一番だと思います。

彼方では、中流以上の家庭に行きますと、必ずピアノがあります。

そして、図書室も必ずあります。

そして、その上の書物は大抵奥様の愛読書物であります。

私は、

彼方の家庭で楽しみの一つに読書が、

加えられているのを見ました。

その時に非常に愉快に思いました。

日中の多忙な激しい業務をすまして後、

夫が帰ってくると楽しい夕食の団欒が開かれます。

夕食後、子供は直ぐに床に就けます。

それが済むと、

妻は居間の椅子の腰掛けて編み物や縫い物をします。

夫はその側に座を占めて、面白い書物を読んで聞かせます。

時々、その書物の批評等をしてお互いに楽しく語ります。

亜米利加の家庭の夕べは、

こうして静かの送られるのであります。

本当に読書を楽しむ事ができるのは、

多学校を卒業してからです。

女学生の時代には、芝居や音楽には出入りします。

だが、読書の方は日々の学課に追われて、

さほど多く味わふ事はできません。

それでも、日本の女学生より多読だと思います。

冬期・夏期の休みを利用して

読むようにしてゐるようです。

女学生の読み物については、

学校では一切干渉しません。

なので、何を見るも全く勝手であります。

ですが、そうかと云って、

不潔な読み物に夢中になるような事はありません。

あまり干渉しますと、却って

劣等なる書物でも読まう。

という気になる様であります。

自由であれば、却って自重するのが人情の常だと思います。