新刊の書物は、彼の地の婦人間に歓迎されます。
ですが、
それよりも雑誌や新聞の喜ばれる事は間違いありません。
米国の婦人は、新聞の隅から隅まで目を通すという程で、
新聞の記事には大変な興味を持ってゐるのです。
殊に音楽や美術に関する記事等は、
誰も見逃しはしないという有様です。
婦人向きの雑誌としては
婦人家庭雑誌(レディース・ホームジャーナル)・
婦人家庭の友(レディース・ホーム・コンパニオン)・
美しき家(ゼ・ビューティフルハウス)等であります。
そのうちで最も読まれているのは婦人家庭雑誌であります。
この雑誌の普通の婦人間に歓迎されますことは、
アウト・ルックが男子間にもてるのと同様であります。
少し教育のある婦人は、
アトランティック・マンスリー等文学的のものを読みます。
家庭では、たいてい4~5種の雑誌を購読、読み、
社交場の話題を得たます。
また、それにより、日常生活をいろいろと変えてゆくのです。
例えば、新しい流行等の紹介記事を読みます。
兎に角、その事を実地に応用してみるのです。
ですが、其のまま真似をすると言うのではありません。
どこか変わった新しい工夫を凝らしてみるのであります。
無意味に人の流行を追うという事は、
米国人には出来る事でありません。
一方、客室を装ったり、食堂を飾ったりする時には、
いつも雑誌と相談を致します。
それでありますから、家庭で読んでいる新聞も雑誌も
それが皆活用の材料となります。
なので、ただただ応接間を飾るというばかりでありません。
どんな種類の書物が、一番歓迎されるかと申しますと、
文学趣味に富んだ書物が、
一般に広く読まれているようであります。
小説等はかなり喜ばれております。
ですが、それも広い意味で道徳的な物、
自然的の書物が多く好まれます。
肉感的なエクセントリックの書物は、
非常に排斥せられます。
例えばトルトイス・イプセン・ジョー・ゴルキー等の作は、
不道徳で醜悪で非美術的であると言って斥けます。
ことに、先年ゴルキーが米国に旅行した時には、
その講演等を聞く人がなかったそうです。
そればかりか、ホテルは彼の宿泊を拒絶した。
それでこそこそ逃げ帰ったという話であります。
これを見ても婦人ばかりでなく、
亜米利加人全体がこういう風な品性の作家と作品を、
嫌うか分かりませう。
この傾向は米国人に限らす、
アングロサクソン人全体の特徴であると思ひます。
新刊の書物は喜んで読みます。
ですが少し古い物ではディツケンス・サカレ―等の作を、
喜びます。
テニスンやロングフェロ――等の詩集も大いに歓迎されます。