洗面器は大抵大理石と瀬戸で作られ、
湯と水とを別々に出す二つの栓が付いています。
熱湯が、いつでも出ます故、大層便利です。
洗面器の上部の壁上・丁度顔位の高さの所に、
長さ一尺五寸、幅一尺位の白く塗った戸棚があります。
これは、化粧品や防腐剤その他必要なる薬品を入れる棚です。
その戸は普通鏡になっております。
風呂は細長い形で、金属に瀬戸を引いて作った物が
最も多くの用いられております。
湯と水がいつでも出るので、
好きな時に風呂に入る事ができます。
彼方の人は、非常にたくさんタオルを用います。
バッスルームに置いてあるタオルの綺麗な事は、
一寸(ちょっと)日本人には想像ができません。
壁に沿うた長いタオル掛けに7から8枚、
よく洗いひのしをかけたタオルが
細長く四つ折りになって掛けてあります。
皆、両端が美しく刺繍され、家の名前が入って居ります。
ついでに申し上げます。
米国では、良いタオルを沢山っ持ってゐる事が、
主婦の楽しみの一つなのです。
だから、結婚のお祝いやクリスマスの贈り物に、
その人の名を縫入れたタオルを贈る事が
大層流行しています。
女中部屋は、洗面室と台所の間にあり、
ベッドも鏡台もみな備わっております。
台所は、バッスルームと同じく、
一つの部屋になっております。
入口は大抵二つ、一つは廊下に、
もう一つは食堂につながっています。
窓は一つか二つです。
床は大抵石ですが、
石でない所は油を引いた布が敷いてあります。
床の汚物を容易く(たやすく)除去する事ができます。
それでは、ここにある器具、まずストーブから説明します。
ストーブは普通瓦斯ですが、
最も進歩した家庭では電気ストーブを用います。
流しは金属と瀬戸で出来た白色の物です。
此処も随意に湯水を出す事が出来ます。
これに並んで、洗濯器が二つ三つ備えてあります。
これも外部は大抵金属か木です。
内部の洗う所は白色の瀬戸が引いてあります。
湯と水が矢張り何時でも出せる様になっております。
それから大きな硝子戸の戸棚が御座います。
料理道具・食器・食物等をすべて入れる事が出来ます。
食物を入れる氷の戸棚・即ち冷蔵器は、必ずついております。
近頃建てられた最も進歩したアパートメントでは、
丁度押入れが家に付いているように、
各住宅の台所に冷蔵器が付いています。
アムモニヤを利用して、
自然に氷ができるようになっております。
ですから、他から氷を買い入れる必要はありません。
これ等は、実に進歩した事ではありませんか。
それからもう一つ便利なのは、ダムウェーターです。
七階も八階も上に住んでいる人が、
日常の食料品を運ぶ為、毎日出る色々なごみを捨てる為に
行う階段の昇り降りは大変な労力です。
でも、そのような事はしなくてもよいのです。
それは、台所の隅の所に昇降機の様に、
三尺ばかりの立方の箱が、
昇降するようになっております。
普通は、戸が閉まっております。
用のある時は戸が開き、そばのボタンを押すと
下から箱が上がってきます。
その箱の中に、
何でも捨てようと思う物をしっかり包んで入れ、
これを下に送ります。
また、電話等で食料品を注文した時に、
商人はこの箱を利用して届けます。
台所の様子は、大体こんなものです。