食堂・・・
食事をする所は、最も良い場所でなくてはならない。
と、いう欧米人の考えが現れてゐます。
食堂は最も美しく装飾されて、最も清潔に保たれております。
食堂は部屋の作り方が他とは違っております。
それは、他の部屋では四方の壁が、
天井から下まで続いております。
しかし、ここでは天井から約二尺ばかり下がった所に、
狭い棚の様に2~3寸ばかり突き出した横木が入っております。
その横木の上は通常天井と同じ壁色で、
その下は異なった壁紙で装われております。
横木の上には、美しい皿などが
部屋の装飾のために置かれてあります。
床上の敷物は、
窓に優雅に懸かったカーテンの色に調和しています。
中央のテーブルは鏡の様に磨き上げられて、
その上の美しい花瓶と花とを、鮮やかに映しております。
テーブルの周囲には、
お揃いの椅子が、数脚行儀よく並んでいます。
正面の壁に沿うて鏡の付いた戸棚が置かれ、
その中に、ナプキン・フォーク・ナイフ等が、入れられています。
その上には、銀製のカフィーや
ティーを煮る道具が整頓されています。
バーラー(応接間)に参りますと、
また趣がとても変わってまいります。
ここは部屋も広く、窓も三つも四つもあります。
光線がよく入って、陽気でございます。
まず目につきますのは、正面の壁についている装飾です。
壁の中央で床から三尺五寸ばかり離れた所に、
大理石の棚があります。
その上部は同じ石または彫刻された木に縁取られた鏡で、
その下はファイアー・ブレースと呼ばれる風雅な炉であります。
棚の上には、花瓶・置物・写真等が飾ってあります。
それは、丁度日本の座敷に床の間がある様に、
なくてはならない物なのせう。
四方の壁には金縁の額が程よく配置され、
壁紙はカーテンや敷物・イス等の色と調和して
部屋全体を愉快にしております。
床の上には、椅子・長椅子・安楽椅子等が具合よく並んでいます。
部屋の片隅には、ピアノが弾く人あれかしと、控えて居ります。
アパートメントの部屋の様子は、ざっとこんなものです。
此の他書斎・裁縫室等の付いている所もあります。
終わりに一寸暖室装置と窓についてお話いたしませう。
アパートメント・ハウスのよい所は、
暖室装置が非常によくできている事であります。
それには、いろいろな種類が御座いますが、
多く用いられているのは、スティーム・レディエーターです。
それは、室の隅に装置せられた鉄管に、
スティーム或いは沸騰した湯が通っています。
そして、自然に室内の空気を暖めます。
ですから、冬でも薄い一重の着物で沢山です。
欧州人は、
米国の家があまり暖かすぎていけない。
と、いう批評を致します。
窓は、ふつう上下に動くのみで、外部を掃くのに困難です。
だから、綺麗に保つ事が難しいのです。
近頃は、窓の硝子戸は前に開く物が、
使用せらるる様になりました。
だから、掃除しやすくなりました。