寝室の数は、たいてい4つばかりで、
その中三つは家族用に、他の一つは客用になっております。
構造はいたって簡単ですが、
廊下に面して入り口のドワーがあり、
外部に面して、一つ二つの窓があるのみです。
しかし、室内の器具装飾等は非常に凝ったものです。
窓には、光線を丁度良くするため、
白い色と黒い色の二種類のカーテンが、かかっております。
白の方は、日光の直射を避けて、
光線のみを入れんとする時に、用いられます。
その前に、白色のレースのカーテンと、
色のついた天鳶絨(びろうど)が掛かっております。
それが、光線を加減するために於いてあるのです。
米国人は、一般に日本人の如く日の当たる部屋を好みません。
床上の敷物は、カーテンと壁の色に調和して、
美しい色の配合を見せております。
部屋の中央に置かれた柔らかさうなベッドは、
白色のリネンに華やかな菊・薔薇等の刺繍したカバーで、
覆われております。
側には、3つの引き出しが付いて、引出しの部分のみが三尺、
その上の鏡が二尺、
合わせて五尺余りの高さの鏡台が据えられています。
其処には、
ピン・(米国の婦人は服に日本人が紐を使ふ様に、
ピンを沢山使いますから、
寝室には必ずこれが必要なのです。)
クッション・髪結い道具・化粧道具等が、
程よく並べてあります。
進歩した所では、
寝室の側に寝室付きの小さな洗面所があります。
それがない所では、室内に洗面台を置き、
水入れ・手洗い・コップ・手拭い等の洗面道具を、
乗せて置きます。
寝室には、大抵押入れがあって、
衣服を入れるのに便利ですが、
それのない所では洋服箪笥を用います。
室内は清潔を旨とし、
空気の流通に気を付け、窓を開けて外気を入る丶か、
しからざればドワーの上部にあるトランスファーと名づくる
小さな窓を開いて廊下の空気を入れるのです。
バッスルーム(洗面室)は、
たいてい寝室に接した所にあります。
私共が欧米、ことに米国に行き、
最も羨ましく思ひましたのは、
洗面室の完全している事であります。
外観の美なると衛生的なる設備の完全なるとに於いて、
遠く他諸国は優れております。
入り口は廊下に面し、窓は磨りガラス等ですから、
内部が見えません。
床は石で、四方の壁も下から四尺位迄は石でできております。
だから、床下の汚物を洗い流し、
根本的に掃除する事が出来ます。
壁は、白色・空色・クリーム色等が普通です。
清々した床の上に壁に沿うて、
便所・洗面器・風呂が程よく配置されております。
便所は、最も進歩した形の物で、
真っ白な瀬戸物と金属にて作られ、
用後ボタンを押し、水を出し、
一々清むるようになっております。