世界中の婦人で、最も通性を見出しがたく、

一つ型に入れ難いのは、米国婦人で、

境遇から言っても性質から言っても、

極端から極端を代表している。

と、誰かが、批評したように、

アメリカの女性ほど種類に富んだ者はない。

第一、富の程度に大きな差異がある。

一婦人で巨万の富を有し、王侯も及ばぬような生活に

一生を送り得る人も人もたくさんいれば、

生活に窮し路頭に迷い、誘惑に陥り、

ついに一生を忌むべき罪悪に送る人も少なくない。

それから、容貌の違いも非常なもので、

ギリシャの彫刻に息を吹き込んだ様な

輪郭の正しい姿のほとんど完全な美人に会う。

しかし、ぶくぶく太って、まるで樽に手足を付けたような

日本中、金のわらじで探しても、

これに匹敵する醜い者はあるまいと

思われる様な夫人にも時々ぶつかる。

目は、青色・緑色・灰色・茶色など十人十色である。

また、髪はブラウンが普通で、黄金色・赤・黒等の人もいる。

また、17~18の妙齢な婦人で白色の毛の人もいる。

これは、いろいな人種が集まっているからである。

試みにいろいろな人にその人種を聞いてみると、

私の母は、フランス人で父はアイルランド人です。

とか、

私の母は、ドイツ人ですけれど、

父は英国人で、

母の父はロシア人とノルウェー人の混血児ですから、

私にはいろいろな血が混じっています。

などの答えを得る。

容姿が、こんなに違うくらいだから、

見えない心の違いが察せられる。

極端な唯心論者・極端な唯物論者・

突飛な実用論者、突飛な理想論者、

朝・昼・夕、三度、肉を食べなければ、やせる。

と、騒ぎ立てる肉食主義者、

肉と名の付く物は鰹節でも食べない。

と、いう菜食主義者など種々様々で、

しかも自分の信念で周囲に城壁を築いて、

正々堂々とそれを実行している。

横から見ると、こう違っているけれど、

縦に見ると女性だけに、

大抵同じ行路を通って生涯を終わっている。