さて、ヤコブが旅を続けていると、
神の使いが現れた。
ヤコブ
ここは、神の陣営だから
マハナイム
と、呼ぼう。
ヤコブ
私のしもべよ、
セイルの地・エドムにいる兄エサウに、
あなた様のしもべヤコブが、
こう申しております。
私は、ラバンのもとに寄留し、
今に至るまで仕えていました。
そして、あなたのもとに戻ってきました。
私には、牛・ろば・羊・
それに男女の奴隷がおります。
私の主人であるあなたにお知らせして、
ご好意を得る為、私を遣わしました。
と、伝えなさい。
使者は役目を果たし、戻って来た。
使者
あの方も、あなたを迎えに来られます。
400人があの方と一緒にいます。
ヤコブ
私は、非常に、恐れ、不安だ。
エサウが私を襲ってくるかもしれない。
だから、宿営を2つに分けよう。
もし、エサウが一つの宿営を襲っても、
もう一つの宿営は逃れる事が出来るだろう。
そして、
羊や牛やラクダ・人間を二つの宿営に分けた。
ヤコブ
私の父、
アブラハムの神、私の父イサクの神よ。
私に
あなたの地、あなたの生まれた地に帰れ!
私は、あなたを幸せにする。
と、言われた主よ。
私は、あなたが与えて下さった
全ての恵みとまことを
受けるに値しない者です。
私は、一本の杖しか持たないで、
このヨルダン川を渡りましたが、
今は、二つの宿営を持つまでになりました。
私は、
兄が来て、私や子供達、
その母親達までも襲いはいないか。
と、恐れています。
あなたは、
私は、必ずあなたを幸せにし、
あなたの子孫を、
多くて数えきれない海の砂のようにする。
と、言われました。
どうか、
私の兄エサウの手から救い出してください。
翌日、ヤコブは、
自分の手に入れたものの中から、
兄エサウへの贈り物を選んだ。
雌山羊200匹・雄山羊20匹・雌羊200匹・
雄羊20匹・乳らくだ30頭とその子・
雌牛40頭・雄牛10頭・
雌ろば20頭・雄ろば10頭
を、群れごとに渡した。
ヤコブ
しもべ達よ。
私の先に進め。
群れと群れの間には、距離を置け。
先頭のしもべよ。
もし、私の兄エサウが、
お前は、誰に属するものか。
どこへ行くのか。
お前のこれらは、誰の物か。
と、尋ねたら、
あなた様のしもべ
ヤコブのものでございます。
そして、あなたに、
差し上げる贈り物でございます。
ヤコブも後ろにおります。
と、答えなさい。
そして、
第二番目の群れの先頭者・
第三番目の群れの先頭者・
それぞれの群れについて行く全ての者達よ。
あなた方がエサウに会ったなら、
これらと同じ事を告げよ。
そして、
あなたのしもべヤコブは、最後にいます。
と、言え。
ヤコブの本音
エサウが、自分に会う前に
贈り物で心を和ませてから、
顔を合わせよう。
そうすれば、
私を受け入れてくれるかもしれない。
こうして、
贈り物を運ぶ群れは、
日が暮れないうちに川を渡った。
しかし、ヤコブの家族は、渡らなかった。
その夜、ヤコブは起き上がった。
そして、二人の妻・
二人の女性の奴隷・11人の子供達を、
ヤボクの渡し場に連れて行き、
ヨルダン川を渡らせた。
宿営にはヤコブだけ一人残った。
やがて、刺客が彼を襲ってきた。
そして、夜明けまで格闘した。
刺客
ヤコブに勝てない。
だが、ももの関節を襲えば、はずせる。
刺客は、ヤコブのももの関節を外した。
刺客
私を去らせよ。夜が明けるから。
ヤコブ
私は、あなたを去らせません。
私を祝福してくださらなければ。
刺客
あなたの名は何というか。
ヤコブ
ヤコブです。
刺客
あなたの名は、ヤコブではない。
今日からイスラエルだ。
あなたは、
人々との戦いに勝ち、
神との戦いに、勝ったからだ。
ヤコブ
どうか、あなたの名を教えてください。
刺客
いったい、なぜ、私の名を知りたいのか。
私は、あなたをこの場で祝福する。
ヤコブは、
その場所を「ぺヌエル」と名付けた。
私は、神の顔を見て戦ったが、命は救われた。
という意味である。
ヤコブが、
ぺヌエルを後にした頃、夜が明けた。
腿の関節が外れた為に足を引きずっていた。
こういうわけで、イスラエルの人々は、
ヤコブが討たれた
腿の関節の上の腰の筋を食べない。