女性への贈り物の多くは、
趣向を凝らした縫箔したリネンの胴衣、
ハンカチーフ、前掛け等であった。
結婚の約束をしたイデスには、
彼女が嫁ぐ先の名前を縫ったテーブル掛け、
手拭(タオル)、枕掛け(ピローケース)等が贈られた。
何れも、半年~一年かけて作られた物ばかりであった。
米国の婦人は、日本婦人の如くに器用ではないそうで、
大仕掛けな仕事は、手堅く行うようである。
そして、一般に手作りの品物はとても喜ばれる。
米国では、そういう物は機械で作るからである。
贈り物の時間がすむと、婦人の息子ガーレー氏は、
北極探検奇譚に、節をつけながらたくみに朗読し、
皆の願いを解いた。
こんな場合に、引けを取らぬのは米国人の特徴である。
主人側が気を使わないでも、
客同士が互いに面白い事をしあって盛んに興じあう。
この国では、
十歳未満の子供には、電気だのガスだのと、
人間の手でできた光を見せるのは、悪い。
とかいうので、6時頃は皆に寝床につかせる。
余程の事がなければ、夜遅くまで起こしておかない。
この晩も前の家の子供は、私共の家に来なかった。
だから、
集まりが散ずると私共は、
子供の家にプレゼントを持って出かけた。
彼らの部屋に行ってみると、
クリスマス・ツリーに、赤い蝋燭やマリやキャンディが、
美しく可愛らしく飾られている。
そのそばには、ちいさなテーブルが3っつあって、
靴下が一足ずつちゃんと載せてある。
これは、サンタ・クロースというおじいさんが、
子供が寝ている間に、クリスマスの贈り物を入る為である。
プレゼントは、子供たちの喜ぶものである。
私共は、抜き足してテーブルのそばに行き、
子供の沢山のプレゼントを、靴下の中に捩じり込み、
入らない物には、名前を書いて側に置いて帰って来た。
翌朝、まだ、暗い中に電話がかかて来た。
子供達が、
サンタ・クロースの贈り物を、
開けるから今見に来てくれ。
と、息せわしく呼んでいるのである。
それで、昨夜から降り積もった雪を踏み分けて、
大急ぎで行くと、三人の子供が、
キャッキャッ。
と、騒ぎながら、我らを待っているのである。
鶴さんには、私が見せる。
と言い、いきなり取り付く。
そうしなさい。
と、言い母が彼に赦しを与えると、
いきなり二階に駆け上がり、
贈り物を両手で抱えながら降りてくる。
そして、
これは靴、これは人形、これはお菓子、これは本
と、言って一つ一つ取り出してみせる。
その喜びは、例えるものなしである。
宗教心の強いガーレー老婦人は、
子供達がやや静まるのを見て、
彼らを暖炉のそばに呼び集め、
子供の面白がりそうなクリスマスの話をして聞かせた。
普段の躾が良いから、子供は誠によく聞いている。
時々、質問を発する。
老婦人は一つ一つ丁寧にこれに答えた。
話が終わって、子供の父が家族を代表して神に祝福を捧げた。
一時やんでいた雪は、又、降ってきた。
クリスマスの気分はこれで
しほたけなわになった。