私が棲んでいた家の前に、主人の娘の家族が棲んでいた。
其の娘には、三人の子供がいた。
娘は、いつも病身であった。
女中が、五つになる長男が一人でいる時に、
坊ちゃんのお母様はいつもお身体が悪くてお気の毒ですね。
と、言うと、坊ちゃんは眼を怒らして、
お前たちの様に太っちょな女中は、丈夫だけれど、
奥様(レディ)という者は病気するもんだ。
と、言った。
これにも女中の問題が含まれている。
イデスは、ある日、私に次のような話をして聞かせた。
或る所に一人の若い男がいた。
彼は、二人の女性の友達を持っていた。
友の中の一人は、美人であったけれども、
別にこれといふ芸を身に付けていなかった。
も一人の方は、大層醜かった代わりに、
歌が大変に上手であった。
若い例の男性は、いろいろ考えた挙句、
歌のうまい方と結婚することに定めた。
結婚の晩には、
新婦が大層お飾り(おつくり)を、していたため、
そんなに醜くは見えなかった。
翌朝、妻の寝顔を見ていると、
醜くて醜くてとても見ていられなくなった。
ことにおいて、彼は大声を上げて
Get up and sing!!起きろ!そして歌へ!
と、言った。