夫人は、米国の人で、
今のご主人が米國に旅行された時に、知り合いになり、
帰國後、英國に呼び寄せて結婚されたとの事である。
そして、夫人は、英米婦人の相違について話された。
米國婦人は、
小さい時から自由に男子と交際する事を許されている。
しかし、英國婦人には、この自由がない。
舞踏に行くにも、芝居に行くにも、
必ず、年上の婦人がつかなければ、
未婚の男子と同道することはできぬ。
男子も同じ事で、米國男子は婦人を知っている。
だから、婦人も自分と同じく長所もあり、
欠点もあるものだと思っている。
ところが、英國の男子は、婦人を知らない。
だから、一つ良いところのある婦人を見ると、
天使のように完全無欠な人だ。
と、思ひ、一つの欠点を見出すと、
婦人は悪魔だ。
と、結論する事など話された。
ディナーが済むと、家族揃って編み物などしながら、
ストーブを取り巻いて話した。
翌日は一日、オックスフォード大学を見物した。
その事を書けば長くなる。
かといって、短く書いては不完全だし面白くあるまい。
だから、ここには書かぬことにする。
かくて、7月3日、ロンドンに来て、
一週間ばかり市中を見物した。
しかし、家庭まはりをした後のホテルの生活は、
殺風景極まるものであった。