帰ると家中ひっそりとして、
2階の大広間だけに灯が見える。
我々が帰って来た事を知り、主人が出迎えた。
今夜は家族の礼拝がありますから、お出でになりませんか。
併し、お疲れならばご遠慮なくお休みください。
と、言われたので、
こんなに遅くても良ければ、
末席に加へさせて戴きましょう。
と云って、部屋に入った。
夏の最中であったが、寒いのでストーヴが焚いてあった。
その周りに人々が座っていた。
夫人は、ピアノに向かって細い美しい声で、
印度語の讃美歌を唱ってゐる。
少しも意味はわからぬが、悲しい訴えるような調子である。
次に二人の婦人が英語の讃美歌を唄った。
私に、
是非、日本の唱歌等を唄って。
との夫人の頼みがあった。
しかし、私はまだ人の前で唄ふ程声の練習が出来ていない。
だから、失礼とは思ひながらお断りした。
夜がだんだんと更けて静かになった時、
主人が一同に変って祈祷した。