舞踏会で、一番もてるのは、

やはり可愛い無邪気な若い婦人であります。

男子は必ず、婦人と組み合って踊りますが、

二段ばかり踊ると、相手を変えてさらに踊ります。

その時、何といっても美しい衣服の人が、

一番もてはやされるのですが、

それは、単に美服と富豪とを考えあわせたり、

または、その他の事を考えて、

美服を望んたりするのではなく、

こういう華やかな集会で、

美しい服という事が、色彩の上から、歓迎されて、

そうなのだろうかと思います。

さて、私も一夜中、

この美しき群れに交じって舞踏して、

朝はすっかり疲れてしまいました。

肩も腕も足の骨節も痛いほどに思いましたが、

しかし、夜の光景は色彩の上からも情味の上からも、

深い印象を留めて忘れる事が出来ません。

そして、男子の舞踏者が、

若い美しい婦人と組まんとして競うにも、

ちっとも忌むべき態度がなく、

いかにも無邪気で天真爛漫で、

その為にいろいろの弊害の来るような事等無い事を思うと、

実に羨ましく思わざるを得ませんのです。

宣教師から舞踏会の弊害を聞かされ、

また、それを想像した私は、

ついに一の弊害を見出す事はできませんでした。

しかし、それだからと云って、

これを、

そのまま日本の今日の社会に移したらどうであろうか。

その時は、わたしもやはり、

今日の日本の教育家庭の考えているところと、

同じ事を考えねばなるまい。

と、思いました。