私が、米国へ参る時は、

丁度知り合いの英国の女性宣教師・ミス.パティが、

帰国をするので、

その人と一緒に参ったのでありますが、

その宣教師は非常に物堅い人で、

こちらでも、

ほとんどピューリタン的生活をしていた人であります。

この宣教師から種々渡米後の事を、

やかましく聞かされましたが、

その訓戒の中に、

米国で流行する舞踏会は、

いろいろ芸買いも多く、

悪感化を及ぼすものであるから、

決して出席してはならぬ。

と、堅く戒められました。

ですから、私も舞踏会は、悪い事に極めてしまって、

そんな所へ、殊に勉学中に足を向けてはならぬもの。

と思い込んでしまいした。

ところが、あちらの習慣は、

私の想像していた習慣とは全く違っていました。

第一、学校の寄宿舎に舞踏室が設けられているのです。

学校の寄宿舎は、随分大きなもので、

一棟に1000人から収容できます。

しかも一人一室の定めですから、

その大きさ加減がほぼ推量できます。

そして、その最下層に舞踏室が設けられてあるので、

その日の自習を終わった者、勉強に疲れた者は、

皆、この室へ集まって来て、

嬉々として無邪気に愉快に舞踏をやるのです。