紐育というと、

ただ広い東京のようなところと誰も想像するであろうが、

実は、マンハッタンという細長い一小島の上に

建てられている街に過ぎない。

左には、ハドソンという川が洋々として流れが、

右には、イースト・リバーという海峡が、

ロングアイランドとの間に横たわっている。

この島の中央にあって、

モーニングサイト・ハイドという一つの岩山がある。

コロムビア大学は、

実に、この岩山の上に建てられているのである。

全都500万人の人波は眼下に見下ろされる。

花岡石と煉瓦とで固めた大小123の大建物が、

厳然として建っている。

これが一万の学徒を収容せるコロムビア大学である。

コロムビアには、数え切れぬほどの分科がある。

まず第一にコロムビア・カレッヂ。

これは、中学卒業の男子に高等国民教育で、

加えて予備的専門教育を施す所である。

次にパーナード・カレッジ。

これは、右と同じ様な教育を、。

女子に向かって授ける所である。

次に法科大学。

これは、カレッジの卒業生に、法律を研究せしむる所である。

次に医科大学。

これも同じくカレッジの卒業生を収容する。

建築科・採鉱科・電気科・機械科・応用科学科・その他。

これらは、主にカレッジの卒業生を収容する。

音楽科。この科の学生もカレッジの卒業生である。

高等師範学校。

これは、カレッジと同等の教育を施す所、

我が国の高等師範と同じようなもの。

しかし、特科性として、

小学校幼稚園の教師などを多数に収容する。

薬学科。

これは、カレッジの卒業生を取り入れる。

大学院。

ここを出た人には、二種類の学位が授けられる。

米国のカレッジ、

もしくは日本の大学などを卒業して、

12年専門的な研究をなし、

筆記試験・論文試験に及第した者は、

大学院において、マスター・オブ・アーツの学位を

授けられる。

又、カレッジを卒業してのち3~4年専門的研究をなし、

語学試験・学科試験(いずれも筆記試験)・論文試験・

口頭試験に及第した者は、

ドクトル・オブ・フィロソフィー

という最高学位が与えられる。

この他に神学科がある。

これは、ユニオン神学校の中にある。

ここには、カレッジの卒業生を収容する。

正規の学科を修めて出るものには、

バチュラー・オブ・ディビニティーなる学位が与えられる。

この頃は、新聞学科というもができている。

巨万の基本金と、完備せる機関とを、

有しているのであるから、

細かい所に注意が行き届いている。

例えば、私がいた大学院中の心理学科においては、

完全なる設備があるのはもちろん、

12~13人の学生に対して6~7人の教授助教授がいる。

コロムビアにはこれほど多くの学科があって、

一万人以上の本科生・特科性を収容し、

学徒の多いという点においては、

ゆうにハーバードを凌いでいるのであるが、

それだからというて、

多数の学生を一つの教場に追い込んで、

蓄音機的の講義を聴かせることはない。