一斉の汽笛は私を乗せたターター号と
見送り人の艀とを引き離した。
今までは送ってきた人々のお祝いの言葉に酔うて、
希望の光の御心を照らしていた。
勉強して立派になり、故郷に錦を着て・・・・
と、いうような今から思うと
極めて子供らしい考えが意識の中央を漂っていた。
けれど、いよいよ船が動き出して
金髪碧眼の人々の間に自分を見出した時には、
意識の中の光景は全く違っていた。
筆ならでは後に・・・・
さては、親兄弟にさえ明かせぬことをも話しては、
同情を求めた親友の誰々、
朝夕会う度に議論を戦わした学友、
あぁ、これらの人々とここからしばらくは・・・
レールに靠れて今後のことを考えていた私は、
後ろの人声に気付いて目を見上げると、
雲のように地平線上に浮いていた故国は
今しも目の前から全く消え去らんとするのであった。
p嬢
こんなところに一人でいたの。かわいそうに、
さっきから部屋に行き、食堂に行ったり、
音楽室までも覗いてみたのだけれど、
いないので、心配しました。
もう、夜のご飯の時間ですよ。
下へ行って、用意をしましょう。
と、私の肩に手をかけて子供でもあやすように言った。