彼国では、

結婚と云う事は、新しい家庭を作る。

と、いう事を意味する。

だから、婚約時代は男女ともなかなか忙しい。

男子は、一生懸命に働いて、未来の妻の為に、

相当な家を持ち、新婚時代が楽しいように、

金と時の余裕を作ることに努める。

嫁入り支度は、日本とは大分違っている。

日本では、美しい衣服や装飾品を沢山持っていく。

彼の国では、

新世帯に必要な物を持ってゆくのが恒例である。

この頃は、

テーブル・クロース・ナプキン・シーツ・タオル等に

自分の少女時代の名を縫箔し、

嫁入りの記念に持ってゆくのが流行なので,

ダイヤモンドの指輪が嵌ったその日から

縫箔や裁縫で毎日忙殺されている。

米国の家庭に呼ばれて行くと、

枕掛や手ぬぐひに非常に美しい縫箔のした物がある。

これは、たいてい主婦が婚約時代に自ら作ったものである。

米国婦人は、

この時代が一生の黄金時代だ。

と、言っている。

重苦しい家庭の責任が無く、

自由に思う人と交際ができるからであろう。