ある人に息子がいました。

弟が父に

お父さん、私に財産の分け前を下さい。

と言いました。

それで、父は身代を二人に分けてやった。

それから、幾日も経たぬうちに、

弟は何もかもまとめて遠い国に旅立った。

そして、放蕩して湯水の様に

財産を使ってしまった。

何もかも使い果たした後で、

その国に大飢饉が起こった。

彼は食べるにも困り始めた。

それで、その国のある人のもとに身を寄せた。

その人は彼を畑で豚の世話をさせた。

彼は、

豚の食べるイナゴマメで腹を満たしたい。

と、思うほど空腹であった。

だが、誰一人彼に与えようとはしなかった。

我に返った時

父の所には、

パンの有り余っている雇い人が大勢いる。

それなのに、私はここで、飢え死にしそうだ。

父の所に行き、

お父さん、私は天に対して罪を犯し、

またあなたの前に罪を犯しました。

もう私は、

あなたの子と呼ばれる資格はありません。

雇主の一人にしてください。

と、言おうと決意した。

こうして彼は立ち上がり、

自分の父のもとに帰った。

ところが、また家までは遠かったのに、

父親は彼を見つけた。

そして、我が子をかわいそうに思った。

走り寄り、彼を抱き、口づけをした。

息子は、

お父さん私は天に対して罪を犯し、

またあなたの前に罪を犯しました。

もう私は、あなたの子と呼ばれる資格は、

ありません。

と、言いました。

父親はしもべ達に

急いで一番良い着物を用意し、

この子に着せなさい。

それから、手に指輪をはめさせ、

足に靴をはかせなさい。

息子は死んでいたのに生き返った。

行方が分からなったのが見つかったのだから。

そして肥えた子牛を引いてきて屠りなさい。

食べて祝おうではないか。

と、命令をした。

そして、彼らは祝宴を始めた。

畑作業を終えた兄が、家に近づいた。

すると、音楽や踊りの音が聞こえてきた。

兄は、

これは一体に何事か

と、尋ねた。

しもべは、

弟さんがお帰りになったのです。

無事な姿でお迎えした。

というので、お父さんが、

肥えた子牛を屠らせなさったのです。

と、説明した

すると、兄は、怒った。

だから、家に入ろうともしなかった。

父は家の外に出て、宥めてみた。

しかし兄は、

長年の間、私はお父さんに仕えました。

戒めを破った事は一度もありません。

その私には、

友達と楽しめ。

と言い、子山羊一匹頂いた事はありません。

それなのに、遊女に溺れて、

あなたの身代を食いつぶして、

帰って来た子の為には、

肥えた子牛を屠らせなさったのですか。

と、父に訴えた。

父は、

お前はいつも私と一緒にいる。

私の財産は、全部お前の財産だ。

だが、今まで弟は死んでいた。

それなのに、生き返ってきたのだ。

いなくなっていたのが見つかった。

だから、喜ぶのは当然ではないか。

と、説いた。

          

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