その二人の御使いは、夕暮れにソドムについた。

ロトは、ソドムの門の所に座っていた。

ロトは、彼らを見るなり、

立ち上がって彼らを迎え、

顔を地につけて伏し拝んだ。

ロト

さぁ、ご主人、お泊り下さい。

そして、朝早く旅を続けてください。

御使い達

いや、私達は、広場に泊まろう

しかし、ロトがしきりに勧めたので、

御使い達は彼の所に向かい、家の中に入った。

ロトは御使い達の為にごちそうをつくった。

また、パン種をいれないパンを焼いた。

御使い達は、

ロトのつくった食事やパンをいただいた。

御使い達が床に就かないうちに、

街の者達、ソドムの人々が、

その家を取り囲んだ。

街の者達、ソドムの人々

今夜、

お前の所にやって来た男達はどこにいるのか。

ここに連れ出せ。

彼らをよく知りたいのだ。

ロトは戸口にいる彼らの所に出て、

後ろの戸をしめた。

ロト

兄弟達よ。どうか悪い事はしないでください。

お願いですから。

私にはまだ男を知らない二人の娘があります。

娘達を皆の前に連れてきますから、

あなた方の好きなようにしてください。

ただ、あの人達には何もしないでください。

あの人達は

私の屋根の舌に身を寄せたのですから。

街の人々・ソドムの人々

引っ込んでろ!

こいつはよそ者としてきたくせに、

さばきつかさのようにふるまっている。

さぁ、お前を,、

あいつらよりもひどい目にあわせてやろう。

彼らは、ロトの身体を激しく押し付け、

戸を破ろうと近づいてきた。

すると、あの人達が手を差し伸べて、

ロトを自分達のいる家の中に連れ込んで、

戸を閉めた。

家の戸口にいた人々は、小さい者も大きい者も

目つぶしをくらったので、

彼らは戸口を見つけるのに疲れ果てた。

御使い達

ロトよ

他にあなたの身内の者がここにいますか。

あなたの婿やあなたの息子、娘、

この町にいるあなたの身内の者をみな、

この場所から連れ出しなさい。

私達は、

この場所を滅ぼそうとしているからです。

彼らに対する叫びが

主の前で大きくなったので、

主は、今街を滅ぼすために、

私達を遣わされたのです。

しかし、ロトはためらっていた。

すると、その人達はロト・妻・

二人の娘の手を掴んだ。

主のロトに対する憐れみによる。

そして、ロト達を連れ出し、街の外に置いた。

御使いの一人

命がけで逃げなさい。

後ろを振り返ってはいけない。

この低地のどこででも

立ち止まってはならない。

山に逃げなさい。

さもないと、滅ぼされてします。

ロト

主よ、どうか、

そんなことになりませんように。

ご覧ください。

このしもべはあなたの心にかない、

あなたは私の命を救って

大きな恵みを与えてくださいました。

しかし、私は山に逃げる事ができません。

災いが追い付いて、たぶん私は死ぬでしょう。

ご覧ください。

あそこの町は、逃れるのに近いです。

しかもあんなに小さいのです。

どうか、あそこに逃げさせてください。

あんなに小さいではありませんか。

私の命を生かしてください。

御使いの一人

ロトよ、分かった。

私はこの事でも、あなたの願いを入れ、

あなたの言うその街を滅ぼすまい。

急いで、逃げなさい。

あなたがそこに逃げるまでは、

何もできないから。

それゆえ、その町の名はツォアルと呼ばれた。

小さいという意味である。

太陽が登った頃

ロトは、ツォアルに着いた。

その時、主はソドムとゴモラの上に、

硫黄の火を天の主の所から降らせ、

これらの街々と低地全体とその街々の住民と

その地の植物を皆滅ぼされた。

ロトの後ろにいた彼の妻は、振り返ったので、

塩の柱になってしまった。

翌朝早く、

アブラハムは、

かつて主の前に立ったあの場所に行った。

ソドムとゴモラの方角、

それに低地の全地方を見下ろした。

驚くことに、煙が立ち上がっていた。

それは、かまどの煙のようだった。

主が低地の街々を滅ぼされたことが分かった。

神は、アブラハムとの約束を覚えておられた。

だから、ロトと二人の娘を

滅びの街から逃がした。

その後、ロトはツォアルを出た。

そこに住む事を恐れたからである。

そして、二人の娘と一緒に

山の洞穴の中で暮らした。

ロトの長女・ヤナギバ

私の妹ツマブキよ、

お父さんは年をとっています。

この世のならわしのように、

私達を訪ねてくる男性はいません。

さぁ、お父さんにお酒を飲ませて、

一緒に寝て、子孫を残しましょう。

その夜、彼女たちは父親に酒を飲ませ、

姉・ヤナギバが父親と一緒に寝た。

ロトは、彼女が寝た事も起きた事も

気づかなかった。

翌日の事である。

ヤナギバ

ツマブキよ、御覧なさい。

私は昨夜、お父さんと寝ました。

今夜もまた、お父さん酒を飲ませましょう。

そして、

ツマブキがお父さんと一緒に寝なさい。

私達は子孫を残しましょう。

その夜もまた、彼女たちは父に酒を飲ませ、

ツマブキが父親と一緒に寝た。

ロトは、ツマブキと一緒に寝た事も

彼女が起きた事も気づかなかった。

こうして、

ロトの娘・ヤナギバとツマブキは

父の子を身ごもった。

姉・ヤナギバには男の子が産まれ、

モアブと名付けられた。

彼は、今日のモアブ人の先祖である。

妹・ツマブキにも男の子が生まれ、

ベン・アミと、名付けられた。

彼は、今日のアモン人の先祖である。